ミラクルイーグル&リカバリー 藤田が「女神の寵愛」を勝ち取る
勝利の女神が藤田寛之に惚れこんでいるようだった。国内男子ツアーの今季最終戦、ゴルフ日本シリーズJTカップ(5日/東京よみうりCC)最終ラウンド。第3ラウンドを首位で終え、あとは優勝にまい進するのみだった藤田。しかし、6打差の6位タイからスタートした谷口徹が猛追を見せ、藤田の貯金がみるみる減っていく。そんな中で迎えた17番パー5で、女神が藤田に微笑みかけた。
首位に6打差でスタートした谷口は、前半で4つのバーディを奪うと、その後も間断ない猛攻を続けて幾度となくグリーン上でのガッツポーズを見せる。そして、17番でイーグルパットをねじ込み、これまた派手なガッツポーズを決めた。18番をパーで終えた谷口は、1イーグル、7バーディ、ノーボギーでコースレコードタイの9アンダー『61』。通算14アンダーまでスコアを伸ばし、この時点でリーダーボードの頂に立った。
追う藤田は16番を終えて通算13アンダー。最終18番パー3が227ヤードを誇る最難関コースであることを考えれば、藤田にとってチャンスは17番パー5しかなかった。そして迎えた17番、藤田の第2打はグリーンを捉えず、万事休したかに見えた。しかし、ボールは傾斜に当たって大きくキックバック。そして、グリーンのピン奥5メートルほどに止まった。
まさにミラクルのセカンドショット。これを逃す藤田ではなく、見事に藤田はイーグルトライを沈めた。最終18番でも藤田はバンカーに打ち込むピンチがあったが、フワリと打ち上げてピンに絡めるスーパーリカバリーを見せた。ウイニングパットとなるパーパットを沈め、藤田は悲願の国内メジャー初制覇。優勝賞金4,000万円を手にし、賞金ランキングでは金庚泰(韓)に続く2位に浮上した。
シーズン開幕間もない、4月に行われたつるやオープン以来となる今季2勝目。思い起こせば、この大会も藤田と谷口が壮絶な戦いを繰り広げ、プレーオフの末に藤田に凱歌が挙がった。8か月前の余りに劇的な勝利以来となる、余りに劇的な勝利。同門の宮本勝昌らから祝福を受けた藤田は、優勝者インタビューで「人生で一番震えたパットだった」とウイニングパットを振り返った。「明日から頑張ろうと皆さんが思ってくれれば、自分がプロゴルファーとしてやっていく意味がある」と藤田が力強く締めくくり、万来の拍手の中で2010年国内男子ツアーの幕が下りた。