2010年メジャーを振り返る 〜全米プロゴルフ選手権〜
鬼才ピート・ダイ設計の難コース、ウィストリング・ストレイツ(ウィスコンシン州)で開催された全米プロゴルフ選手権。大会初日から濃霧でスタートが3時間10分遅れるトラブルに見舞われ、第1ラウンドは日没サスペンデッド。それでもこの日4アンダー68でホールアウトしたブッバ・ワトソン(米)、フランセスコ・モリナリ(伊)の2人が暫定首位タイに立った。
アーニー・エルス(南ア)、マット・クーチャー(米)、ニック・ワトニー(米)もラウンド途中ながら同じく4アンダー。ここで勝てなければ今季メジャータイトルなしで終わってしまうタイガー・ウッズ(米)は、必死の形相で18ホールを回り終え1アンダー71をマーク。トップグループに3打差の暫定24位タイとまずまずのスタートを切った。
2日目も濃霧による視界不良でサスペンデッドとなったが、クーチャーが第2ラウンドを終え通算8アンダー暫定首位。ワトニーが1打差の暫定2位、ローリー・マッキルロイ(北アイルランド)、ザック・ジョンソン(米)らが通算5アンダー暫定3位タイにつけた。3日目にしてようやく予選ラウンドを消化したが、ここで全英オープン王者のルイス・ウーストハウゼン(南ア)、全米オープン王者のグラエム・マクドウェル(北アイルランド)という今季のメジャーチャンピオン2人が予選落ちを喫する波乱。さらに5人出場していた日本勢も、石川遼、池田勇太、藤田寛之、平塚哲二、小田孔明の全員が決勝ラウンド進出を逃してしまう。
大会はムービングデーの3日目になんとか第3ラウンドを終了。この日リーダーボードを駆け上がったのはゴルフ界の次世代を担う男、21歳のマッキルロイだ。6バーディ、1ボギーの5アンダー67をマークし、通算10アンダー2位タイに浮上。首位のワトニーとは3打差の好位置で最終ラウンドを迎えることになった。タイガーは第3ラウンドでイーブンパー72とスコアを伸ばせず、通算3アンダー31位タイ。「ショットのフィーリングは良い」と笑顔を見せたが、復調にはまだまだ時間がかかるようなプレーぶりを見せた。
今季メジャー最終戦の最終日でまさかのドラマが待っていた。通算12アンダー単独トップで最終18番を迎えたダスティン・ジョンソンが、バンカーをただの砂地だと思い込む痛恨のミス。ここでソール(地面にクラブを接地させること)をしてしまい、ボギーフィニッシュの通算11アンダーから2打罰を受け通算9アンダー5位タイに終わる悲劇的な展開となったのだ。その結果、通算11アンダーで最終ラウンドを回り終えたワトソンとマーティン・カイマー(独)がプレーオフに突入。
勝負は全米プロ名物の3ホールによるストロークプレー。1ホール目でワトソンがバーディを奪い先手を取ったが、2ホール目の17番パー3でカイマーがバーディを奪い返す手に汗握る戦いとなる。雌雄を決したのは3ホール目の18番。ボギーのカイマーに対してワトソンは池につかまるダブルボギーを叩き、軍配はカイマーに上がった。25歳の若きチャンピオンは、ベルンハルト・ランガーに続くドイツ人史上2人目のメジャータイトルに「まだ実感がわかない」と正直なコメント。だがこの優勝で大きな自信を得て、シーズン終了後には欧州ツアー賞金王にも輝くことになった。