2010年メジャーを振り返る 〜全米オープン〜
タイガー・ウッズ(米)が大会史上最少スコアをたたき出し、メジャー史に残る圧勝劇を見せた2000年以来となるペブルビーチGL(カリフォルニア州)での開催となった全米オープン。後続に15打差という歴史的優勝を飾った思い出の舞台で、タイガーがメジャー制覇での復活Vを目論んだ。ところが、第1ラウンドではパットに苦しみノーバーディの3オーバー74。トップと5打差の47位タイと出遅れてしまった。
初日のトーナメントをリードしたのは、2アンダー69で回ったショーン・ミキール(米)、ポール・ケイシー(英)、ブレンドン・デ・ヨング(ジンバブエ)の3人。2か月前のメジャー初戦、マスターズを制したフィル・ミケルソン(米)は4オーバー75を叩き、66位タイとタイガー以上に出遅れた。
そんな中、光るプレーを見せたのが全米オープン初出場の石川遼。ぺブルビーチでの全米オープンで優勝経験を持つ60歳のトム・ワトソン(米)と同組で初日を回ったが、臆することは全くない。安全に忍耐強くプレーするという全米オープンのセオリーを無視したかのようなアグレッシブなゴルフはいつも通り。4バーディ、3ボギーの1アンダー70と出入りの激しい内容ながら、首位グループに1打差の4位タイ。世界最難関のセッティングといわれる全米オープンで最高のスタートを切った。
第2ラウンドも日本の若き賞金王は走り続ける。ボギーが先行する苦しい流れを上手に断ち切り、随所でスーパーショットを披露。2バーディ、2ボギーのイーブンパー71にスコアをまとめ、通算1アンダー2位タイに浮上。ホールアウト後には「もう一度気を引き締めて攻めていきたい」と決勝ラウンドを見据え、カットラインぎりぎりで予選を通過したワトソンから握手で激励され笑顔ものぞかせた。
予選ラウンド2日間を終え、単独トップは通算3アンダーのグラエム・マクドウェル(北アイルランド)。第2ラウンドで5アンダー66と気を吐いたミケルソンとメジャー3勝の強豪アーニー・エルス(南ア)が石川と並び通算1アンダー2位タイ。初日出遅れたタイガーは第2ラウンドを1オーバー72で回り、通算4オーバー25位タイにくすぶっていた。
第3ラウンド、ペブルビーチを得意とするダスティン・ジョンソン(米)が5アンダー66をマークし、通算6アンダー単独トップに浮上。前日首位のマクドウェルが3打差の2位につける展開となる。さらにタイガーにもようやくエンジンがかかり、この日8バーディ(3ボギー)を奪う猛攻で一気に通算1アンダー単独3位にジャンプアップ。エルスが通算イーブンパー4位タイ、ミケルソンが通算1オーバー6位とビッグネーム2人も優勝圏内をキープし、石川もスコアを4つ落としながら通算3オーバー7位タイと踏ん張りを見せた。
最終ラウンドは序盤から上位陣の順位が変動する。この日首位スタートのジョンソンが2番でトリプルボギー、3番でダブルボギーを叩くなど、全米オープン特有の難セッティングに苦しみ大失速。対照的に、同じ最終組で回るマクドウェルが最後まで我慢のゴルフを続け、3オーバー74とスコアを崩しながら通算イーブンパーで逆転優勝。欧州勢40年ぶりとなる全米オープン制覇を達成した。ジョンソンは最終日11オーバー82とまさかの大叩きを演じ、通算5オーバー8位タイ。3位からの逆転を狙ったタイガーも出だしのボギーで波に乗れず、4オーバー75とスコアを落とし通算3オーバー。ミケルソンと同じ4位タイで4日間の競技を終えた。
最終日は石川にとってもメジャーの厳しさを痛感するラウンドとなった。1バーディ、6ボギー、2ダブルボギーの9オーバー80。前日の7位タイから通算12オーバー33位タイまで順位を落とし、初めて挑んだ全米オープンの舞台から降りることになった。首位に2打差の2位タイと絶好の位置で決勝ラウンド進出を決めていただけに「とにかく悔しい」と唇を噛んだが、来年以降のリベンジを胸に誓ったことだろう。なお、その他日本勢では池田勇太と藤田寛之が通算15オーバー58位タイ、谷口徹が通算16オーバー63位タイだった。