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J.J.スポーンがメジャー初制覇「こんな結末を迎えるなんて夢のよう」

更新日:2025/06/16 14:35
J.J.スポーンがメジャー初制覇「こんな結末を迎えるなんて夢のよう」
第125回全米オープンを制したスポーン(写真:Getty Images)

 

 15日、今年の全米オープンはオークモントCC(ペンシルベニア州)の難コースと悪天候が選手たちを苦しめたが、その中で歓喜のフィナーレを迎えたのはJ.J.スポーン(米)だった。第125回大会を制し、キャリア最大の瞬間を迎えた男は、静かにそして熱く、自らの道のりを振り返った。

「上手くいかないときでも、とにかく一打一打に集中しようとした。ずっと自分の中で深く掘り下げるようにしてきた。これは、人生ずっとやってきたことなんです」

 試合中に何度も訪れた試練を前に、スポーンは信じる力と集中力を絶やさなかった。中でも勝負を分けたのは、雨による90分の中断後のプレーだった。「(3月の)プレーヤーズでも中断があって、そこで立て直してプレーオフまでいけた」と語るように、経験と冷静さがその後の流れを引き寄せた。

 最終18番ホール。パターを構えるスポーンの前に立ちはだかったのは雨に濡れたグリーン、そして自らの緊張だった。「スコアボードは見なかった。でも、ギャラリーの反応から、2パットで勝てるだろうとは感じていた。ただ、守りに入って3パットをするのが怖くて、あえて見なかった」

 先に同じようなラインを打ったヴィクトル・ホヴランド(ノルウェー)のパットがスポーンに大きなヒントを与えた。読みとスピードを完璧に合わせたスポーンのパットは、カップへ吸い込まれていった。「ヴィクトルのおかげで助かった。入ったときは本当に信じられなかった。まさに夢のような瞬間だった」

 その夢の舞台に立つまでの道のりは決して平坦ではなかった。少年時代、アカデミーや全米ジュニア育成の王道ルートを通らず、地元の大会から一歩ずつ這い上がってきた。「ジュニアゴルフ、大学ゴルフ、プロ転向、そして今、全米オープンのトロフィーを手にしたんだ」

 そして、今大会の優勝を後押ししたのは、これまでに経験してきた敗北の数々だった。「繰り返しこの位置に来れば、いつかは勝てると思っていた。とにかくそこに居続けることが大事。それが結果につながったと思う」

 この勝利の瞬間に、家族の存在は欠かせなかった。特に父の日でもあったこの日、スポーンにとって最高のプレゼントは、娘たちの笑顔だった。「娘たちと会えた瞬間は、本当に胸が熱くなった」

 全米オープンという舞台で、誰もが憧れる劇的な勝利。そしてその裏にあったのは、家族への愛、仲間の支え、そして何より「諦めない心」だった。「困難があっても諦めない。過去にもスランプがあったが、いつも乗り越えてきた。今回も同じように自分に『やれる』と言い聞かせてきた」

 ホールアウト後、娘を抱いて階段を上るその姿は、すべてを象徴していた。「こんな結末を迎えるなんて夢のようだ。一生忘れない」

 夢を諦めなかった男が、父として、ひとりのゴルファーとして、この上ない形で報われた日。雨のオークモントで刻まれたスポーンの軌跡は、記録ではなく、記憶として多くの人の胸に残り続けるだろう。

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