基本に忠実に打てば応えてくれる 山田泰士プロが語る「FR-5」の真価とは?【後編】
フォーティーンの新作ウェッジ「FR-5」は、アマチュアにも人気の「DJ-6」と上級者向け「FRZ」のちょうど中間的な性格を持つウェッジです。 「 ザ・“ちょうどいい”ウェッジ!? フォーティーン「FR-5」をHC10のアマチュアとプロが試打してみた【前編】 」ではHC10のゴルフライター、芥川順哉さんによるアマチュア目線の試打インプレッションをお届けしましたが、後編ではプロ目線の評価をご紹介します。
試打したのは、YouTubeチャンネル「試打ラボしだるTV」でもおなじみの山田泰士プロ。「ショートゲームが得意」という山田プロから見て、FR-5はどのようなウェッジなのでしょうか。プロならではの言葉で、その魅力と特徴を語ってもらいました。
山田プロがまず注目したのは、構えたときの「顔」。
「58度は、いわゆる丸っこい顔で拾いやすそうな感じがします。特にトウ側のリーディングエッジが丸く、突っかかりそうな雰囲気がない。個体差はあるかもしれませんが、同じロフトのDJ-5よりもロフトが立って見えるのも印象的でした」
構えたときのイメージは、アプローチの安心感に直結します。アマチュアにとって“突っかかりそう”な不安はスイングに悪影響を与えがちですが、FR-5はその不安を払拭してくれる「丸さ」と「浮いて見えないリーディングエッジ」の絶妙なデザインで、アドレス時に自然と安心感を与えてくれます。
実際に15ヤード程度のアプローチを打ってもらいました。
「このクラブ、かなりバウンスが助けてくれます。リーディングエッジが地面にピタッと収まりながらも、しっかりバウンスが効いていて、思い切って打ち込めるんですよ」
一見矛盾するようにも感じる“エッジが浮かずに、バウンスが効く”という設計ですが、これこそがFR-5の技術的な見どころのひとつ。スクエアに構えて、ソールを地面に軽く当てるだけで、ウェッジが仕事をしてくれる。プロの目から見ても、「バウンスで打てる」ウェッジのようです。
「スピンもすごく効きます。フェースを開かなくても、バウンスを自然に当てるだけで、スピンがしっかり入る。アプローチで15ヤードくらいでもちゃんとスピンがかかりますね」
この「スピンがすごい」というセリフ。山田プロ、試打中に何度も口にしていました。
どんな打ち方に合うウェッジなのでしょうか?
「極端なハンドファーストにして右に置きすぎると、少し突っかかる感じもあるんです。でも、ちゃんとシャローに入れていけば問題ない。つまり、理に適った打ち方をすれば、それに応えてくれるウェッジですね」
山田プロがこのウェッジをクルマにたとえると「クラウン」とのこと。過剰なアシストはしないが、ドライバーの操作がしっかりしていれば、その性能をきちんと引き出せる。つまり、基本動作の習得にもってこいのウェッジなのです。
「ウェッジ操作を覚えたい人には、本当におすすめできます。変に“お助け”してくれるわけではないけど、正しい動きをすればそれにきちんと応えてくれる。自分の成長が感じられるウェッジです」
そこで「やさしいウェッジ」として大ヒット中のDJ-6とも比較してもらいました。
「DJ-6のほうが、グースが大きいですね。そのせいか、球はFR-5のほうが上がりやすいです。また、スピンもFR-5のほうが効きます。自分にとっては、逆にDJ-6のほうが難しく感じますし、ソールの抜けもFR-5のほうが良く感じます」
操作性については?
「やはり、DJ-6のほうがフェースの開閉はしにくく、オートマチックなウェッジなんだと思います。そういった意味でも、FR-5のほうがウェッジワークを覚えるのに適していますね」
ウェッジといえばフェースを開いて使うテクニックが思い浮かぶが、FR-5は“開かなくても使える”設計が大きな特徴、と山田プロ。
「もちろん、開いたり閉じたりも問題なくできますが、開かなくてもふわっと球が上がるし、スピンも入る。特にバンカーではそれがよくわかる。フェースを開かなくても、ボールの後ろにドスンとヘッドを落とせば、勝手に出てくれる」
アマチュアが苦手とするバンカーショットでも、フェースを開かずに結果が出るというのは非常にありがたいですね。
「バンカーが苦手な人には特にいいですね。変にフェースを開いたり閉じたりせず、シンプルな動きで結果が出る。まさに、極端なことをしなくても“いい結果”になるクラブです」
また、ラフからの抜けもよく、必要以上にフェースを開かなくてもスッと抜ける。山田プロは「抜けが良すぎて開かなくてもいい」と、特にラフからの脱出性能を絶賛していました。
52度も試打してもらいました。
「52度は58度ほど丸くないし、リーディングエッジもまっすぐ。オーソドックスで構えやすいです。スピンが効きすぎないので、逆に距離が合わせやすい。ピッチ&ランにはちょうどいいです」
「全体的に、“フェースを開かないで使ったほうがいいウェッジ”ですね。だから、上級者向けのウェッジをレーシングカーとたとえるなら、このFR-5は、クラウンのように“ゆとりのある走りからスポーティな走行まで楽しめる一台”というイメージです」
最後に、YouTubeでもクラブを試打した後に聞かれるいつもの質問をしてみました。
―買いますか?
「ちょうど今ウェッジを買おうと思っていたんですけど、これは完全に購入候補ですね」
プロが、そう断言するほどの完成度。アマチュアが安心して打てる顔と設計、そしてプロも納得するフィーリングとスピン性能。まさに「ちょうどいい」を突き詰めた、フォーティーン渾身の新ウェッジ。それが「FR-5」ということのようです。
■山田泰士プロ(やまだ・たいし)
1981年1月31日生。神奈川県出身。Pacific GOLF CLUB所属。しだるTVでもおなじみの石井良介プロとは高校の同級生で、その石井プロにして「本当に曲がらない」という再現性の高いスイングで、アマチュアに寄り添ったレッスンと試打レビューを行っている。
(撮影協力:カレドニアン・ゴルフクラブ)